うふあがり島

遥か東にある島

ルアーを操作していると,にきび面のころの恥ずかしい思い出がフラッシュバックしてくる。特にジギングの時
にそれは良く出てくる。その頃の年代の殆どが前髪やスカートズボンのタック、眉毛などミリ単位で変化させ
ることに時間を費やしていた事と思う。年とって思うことは他人はそれほど自分のことに注目することは無いとい
うこと。つまりその頃誰かが自分と同じでひどく自分を見てくれているという錯覚思い込みをしているわけで
あるが、ルアーを操作する時の気持ちに良く似ている。今動かしたルアーを魚が見ている。もう直ぐ食いつく
とかたくなに信じて動かしつづける。実はルアーの周りには小魚一匹おらずただエゴで動かされた造形物が
魚のふりをしているだけ。そういう感覚に度々陥るのである。釣る為に動かしているのだが、魚が見ている
かどうかは判らないそうなるとやっていることは中学生時代のそれに近い。とどのつまり自分は成長してい
ないのか?という畏怖の念に襲われるのである。
釣れない時ほど心はあちこちをほっつき歩き余計な事を頭に投げかけてくるものである。



波は落ち着きはじめ早朝歩いていった西港の岸壁から漁船が見えた。
この距離なら岸からマグロがつれてもおかしくは無い。実のところ工事の監督さんと話をしていたら
30キロ−40キロ前後のマグロが岸から釣れるときがあるそうである。20キロぐらいのキハダを水深10mぐらいで
GTロッドなら釣った事は有るのだがちょっと想像しにくい。

この島ならさぞ魚が釣れて漁師さんも良い商売と思うが実質はそういうものではない。
1日に漁協で定められた漁獲は1船あたりマグロ2本鰆2本である。それ以外の種は聞かなかったが
つまり島の人口で食する以外の需要が無いということらしいのである。魚自体は南ではあるが
鰆などは脂がのっていてけっこう美味しい。マグロもそんなに悪くは無い。それなのに
26荘の朝昼晩の食事でマグロや鰆が出てきたのは我々が釣って持ち帰った時だけなのである。
飽きているのか?いやそうは考えにくい。やはり辺境の人たちは食には我慢強いはずであるし
焼いても食べられるマグロや鰆が常食にならないのは何か訳があるのではないだろうか?
いずれにしろ朝4時半にはおきて船を港に運び5時30分には海に浮かんでいる。
12時に競りが始まり魚が並ぶ2本なので2本出すわけだがこれがまたでかい。
2本で60キロそして鰆であるが2本で40キロになることはざらである、
つまり100キロ近い水揚げでキロ200円なら2万円。500円なら5万円ということになるのである、
先日知り合いからまき網の話を聞いたが近海で最近毎日黒マグロが1−2億円程水揚げがあるらしい。
キロ4000円つくマグロが1億だと25トン以上入っている計算である。そんな金のうなる話からすれば
つつましい事この上ない。日々の暮らしのために小さな船を出し腹いっぱい釣るわけでもなく。
売れる分だけ食える分だけ釣ってくる。皆年をとった翁では有るが魚を釣っている姿は結構楽しそうである。


再び磯に下りてゆく。ショアーの基本だが南の島の場合余程餌がうじゃうじゃいる場合を除いて
次の時化まで魚は釣れない。いやつれ難いといえるだろう。知ってのとおり南の島の水の透明度は
プランクトンの希薄さを表している。つまり魚が居ないということにつながる。一度ダメージを与えると
なかなか次が始まらないのである。だから新しいポイントを探すのが基本的な釣り方ともいえる。
島に住んでいるなら定期的に調査も出来るだろうが、一時的なつりであるなら同じ方法で回って拾うほうが
確実に結果を出せる。


今日は空港裏の磯を回って歩くことにする。ここの磯は一見無理そうな形相が多いが歩いてゆくとポツポツ
とそれなりの場所に差し掛かる。そこでいろいろやってまた次へ移動ということになる。
まだ海は荒れているのでサーフェスプラグよりダイビング系の方がいいようである。
やはり寒いのであろうか?水温分布を見たら20度は軽く超えている感じではあったが
海にしろ陸にしろ住んでみればはやり寒いのかもしれない。人間の話ではコタツを使う話も
あるぐらいだから魚も寒くて動けないという事も有るかもしれない。


カスミアジや黒むつブダイ等が飽きない程度に釣れて来る・結構丁寧に釣らないとつれ難い
まずポイントについて1投目が一番釣れそうでは有るが。そのパターンで釣れない事も多い。何らかの動き
の変化を与えて魚が出てくるのを良く見ておきそれと同じもしくはその近辺に食いやすそうなルアー
を通すのが基本である。あくまでこの島の最盛期ではないという状況を踏まえての戦法である。

南の島ではちょっとした用心が必要である。特に下の段から海沿いを釣って歩くときは常に海面を注意しておく必要がある。
凪いだ海面が突然うねりによって競りあがり牙をむく。そして数回テーブルの上をすっかり拭い去ってまた静かな海に
戻る。




今回南は良い感じではなかった、たぶん風の向きが北の時期なので北の磯は良い感じにかき混ぜられて
居るのだろう。たぶん5月下旬のハーリーの頃には南がいつも吹くことになるそうすればまた違ってくるだろう。

エメラルド色の環礁の外は紺色の海である。その紺色が近いと思わずそこまでルアーを飛ばし。何かを期待する。
釣りたい、という気持ちと、何が出るか判らず怖いという感覚が折り重なり胸が苦しくなる。



↑二六荘がやっている浅沼商店フェリーがつかないと商品が表まで並ばないフェリーがつくとどこの町にもある
雑貨店となる。右↑周遊道路が出来る前は磯にでるのも一苦労藪をこぎつつ磯に出る。今はその必要が無い。



下郵便ポストにフルーツバットの剥製が取り付けてある。
何の意味があるのか?島の代表動物なのか?


昼1時過ぎにさて北の残りを潰そうかというときに船長から出撃の電話がなる急いで帰って
船着場ではなく船置き場に到着江崎から出向する。今日は「一番つれる所に行く」と船長はいい西港の前の
朝、、漁船が居た辺りに船がとまった。通常釣りの場合第1投目には勝負ルアーをつけることが多いと思う
当然である。初っ端からどうでも良いと思うような代物を使うはずが無い。私も長年の経験から割り出した
条件にあったルアーを選ぶわけだが30m辺りですっと無くなった。

そんな状況がわからないほど未経験ではないが落とさねば魚は釣れない。70mライン以深迄
ラインが抜けきればとりあえずはルアーは無事である。「たぶん120−90までのラインにマグロは居るよ」。
通常は120−100の間に餌を流すらしい。毎朝行われている一本釣りは2つのブイと1つの旗によって1仕掛け
錘まで100mの縄に玉浮きが1つ1−2m開けて旗つきのブイという具合。それを生きたムロアジをつけて2つ流すのが
ここのやり方である。最初の小さなバケツ程のウキが沈めば小さい魚、旗が一瞬沈めば大きい魚
といった具合である。仕掛けの長さは基本調整できない。漁が少ない時に長い縄に変えたりする程度
らしい。つまり基本どこがベストかはわかっていないということである。ただジギングでの釣果から判断する深さが
その辺りということになるらしい。

亮太は相変わらす最初に釣れたロング系列を使っている。私はいろいろと使うつもりで持ってきてはいたが
只今結びなおし中。である。というまに彼らのジグも切れた。そして私の結びなおしたジグも何とか深場には入ったが
90を超えた辺りでまたもやスッパリ切れた。既に5−6個底の無い海にジグが落ちていった。ここまでやられると
ちょっと何かやりたくなる。確かにマグロ釣には来たが、畑の大根みたいに鰆がウジャウジャこの水域に
居るのなら釣って見るのも一興である・まずはジグを切られる主原因たるアシストフックをやめてテールに
3/0のトレブルをつける。ジグは長いほうが良いが動きが悪いのでSL230を使用して沈める。格段に
フォール中の切れが減少した。120程沈めたら一気に上まで巻いてくる大抵70mラインぐらいでドスンと乗ってくる。
後はそのまま巻いてくるだけである。やがて魚がみえてくる小型の5−6キロのサイズである。次のはでかくてしかもスレだった。
相当引くし面白くもある。しかしどれほど居るのかわからない。いじめ始めると魚信が遠のいたので
ロングジグに換えるとまたもやスッパリである。既に3人で15個はなくしている。因みに一寸ワイヤーをつけて
ゆっくりしゃくってみると何も当たらない。で、フロロに換えるとスッパリという非常ーに由々しき事態が続く。
一番いけないのが上層に上げると食われるので下でジグジグしていると焦れているのか?
PEラインを途中から切るのである。「俺はこの層にいるからかかって来い」的なメッセージである。腹立つ魚である。





暗くなり始めて鰆のアタリ無くなりはしないがあんまりあたらなくなった。しかしたったの3時間で20個近いジグが
海に消えた。その夜の戦力分析でジグを急遽送ってもらうことになる。次の日早朝より船に乗ることになる。
深いラインからスタートしてみるかなり用心したが鰆は居ないようである。まずは新留氏にヒット、13−4キロが上がるロングジグ
がやはりヒットしやすいようである。そこで私もロング系にシフトして沈める。と、
新留氏からスタートして10秒内に3人ともロッドを曲げる。
こうなると誰か早く抜く必要がある同じ状況であげれば回る魚の場合辛い事になるなる可能性がある。
2人ならクロスするだけに終わるが3人の場合織られる可能性がでてくるそうなると最悪3本とも切れる。
それを防ぐには1本先に抜く必要がある。一気に上げて来るが既にラインが難しい状況になっていた。
リーダーまで巻いたが他のラインが結び目のところにかかっているここでクロスしている場所を結び目から
リーダーにシフトできたら良かったが結局は走ってしまい私のがブレイクした。



この場合仕方ない先にかかった新留氏のラインが切れなくて良かった。基本自分のミスである。
魚はけっこうでかい。30キロは超えているだろう。中貫き33キロだったので35−6キロというところか?
そうこうしているうちに日が昇り鰆がつれ始める。これも15キロは有りそうなデカイ鰆である。
例のリアフックシステムで数匹いじめていたらまたもや途中からラインが切れてしまう。

浅いラインに入るとサーフェスからボトムまで満遍なく鰆が居るようである。底につけて2シャクリでヒットする
始末である。結局日が上がるとマグロは居なくなり鰆が増えていった。またもやジグのお代わりをすることになりそうである。